負の所得税という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 所得税と聞くと払うべき税金にも聞こえますが、「負」とつけることによって何が変わるのでしょうか?
負の所得税とは
負の所得税とは、累進課税の一つです。累進課税と聞くと「お金持ちから多くの税金を取る」ということをイメージしますが、負の所得税とはこの逆で、「貧乏人に国からお金をあげる」ということになります。
税金と聞くと納めなければいけないものというイメージですが、貧乏人に対しては逆に税金がもらえるということになりますね。
ベーシックインカムと負の所得税は少し違う
負の所得税に関して軽く説明していきましたが、ベーシックインカムと比べると次の点に違いがあります。
ベーシックインカム | 負の所得税 | |
もらえる人 | 全員 | 所得の低い人 |
もらえる金額 | 全員一律 | 所得に応じて変化 |
ベーシックインカムは全員が同じだけのお金をもらうことができます。一方、負の所得税は累進課税なので所得は低いけど少しはあるという人は全くない人に対してもらえる金額は少なくなります。
負の所得税自体は貧困対策として考えられている
負の所得税は所得に応じて決められるため、確定申告をすれば自動的にもらえるお金も決まります。還付金みたいなものですね。(とはいえ、日本では負の所得税は導入されていないので空想の話となりますが・・・)
貧困に陥ってもいちいち申請しなければもらえない援助よりかはマシかもしれません。最後のセーフティネットといわれている生活保護でさえ申請が必要ですからね。それに比べて確定申告はサラリーマン以外の人は(学生などを除き)必要となっていますので、めんどくさい手続きが増えるということはありません。ベーシックインカムと同じく、負の所得税もまた貧困対策の一つとして考えられている構想なのです。
負の所得税にはデメリットが存在する
しかし、負の所得税には大きなデメリットがあります。それは、所得税が負の部分で格差が起きるということです。
例えば、収入が0の人で所得税が-90万円(90万円もらえる)と、ちょっと働いて収入が30万円の人で所得税が-60万円だった場合、働いている人と働いていない人と収入の差がなくなります。さらに累進性を高めて収入30万円の人の所得税が-40万円となった場合、この人の収入は70万円となり、働いていない人の方が収入が上になってしまうということになるため、これでは勤労意欲の低下につながってしまうことは間違いないでしょう。(スイスではベーシックインカムの導入の国民投票が2016年に行われましたが、このときの構想は本来のベーシックインカムではなく、負の所得税に似てるといえます。)
このためか、現在のところ負の所得税の導入を積極的に行っている国はありません。(過去にアメリカの一部地域で実験が行われたことはありました。)
最近では、この負の所得税をさらに改良した「給付付き税額控除」という構想もあるようです。ベーシックインカムから話がそれるためこの構想については詳しくは話しませんが、負の所得税とベーシックインカムは厳密には違う構想であるということが分かっていただけたでしょうか?