ベーシックインカムに反対する人たち – その1

ベーシックインカムはよい部分もたくさんあると思われますが、もちろんベーシックインカムの実現に否定的な人も存在します。なぜ否定的なのかを紐解いていくシリーズその1です。(なお、その2ができるかはわかりません。)

批判が出てくるということは、その制度に関して何らかの問題を感じているということなので、こういった意見を分析するのもまた大切なことだと考えられます。議論というものはこういうものなのだと思います。

イギリスのスピーナムランド法を元に反対する記事

こんな記事を見つけました。

いいことだらけのようなベーシックインカムですが、現実にはこのような政策を採用している国はひとつもありません。しかし歴史をさかのぼれば、きわめてよく似た貧困救済策を実施した例が見つかります。それは、産業革命勃興期のイギリスです。

(中略)

1795年5月6日、スピーナムランドという小さな町に集まった判事たちは、貧困問題を解決する画期的な決定を下します。彼らは、「一人ひとりの所得に関係なく最低所得が保障されるべきである」として、パンの価格に応じた賃金扶助を命じたのです。

「生存権」を大胆に認めたスピーナムランド法は、イギリス全土に急速に広まっていきますが、1834年にあえなく廃止されてしまいます。この善意にあふれたアイデアの、いったいどこが上手くいかなかったのでしょうか。

(中略)

このようにして、「すべてのひとに最低限の生活を保障する」19世紀はじめのユートピアの実験は、ものの見事に失敗してしまいました。

引用:ベーシックインカムは「愚者の楽園」 – 橘玲公式サイト

詳しいことは引用先に書いていますが、簡単にまとめるとベーシックインカムと類似したスピーナムランド法が失敗したためにベーシックインカムも失敗するだろうという記事です。

失敗にの原因も簡単に説明すると勤労意欲が減少し、賃金が低下し、貧困ビジネスがのようなものが発生し、働き続けた人は低下した賃金が原因で破産していったとしています。

スピーナムランド法とベーシックインカムの違いを比べてみる

まずはスピーナムランド法について紐解いていきましょう。

1795年に始まるスピーナムランド制度は、物価連動制の院外救貧制度である。パンの価格に下限収入を連動させ、働いていても下限収入を下回る家庭には救貧手当が支給された。

(中略)

パンの価格をもとに基本生活費を算出した。この基本生活費に収入が届かない家庭には、その差額分を補填した。

引用:救貧法 – Wikipedia

この制度が始まった背景にはフランス革命の影響で物価が高騰し、一方で民の収入が増えない、現代で言うといわゆる「スタグフレーション」みたいな状況になっていたことから、働いても収入が生活費に届かない家庭に対してその差額分を補てんすることにしたのです。

ベーシックインカムをある程度知っている人ならもうピンときているかもしれませんが、結論から言うとこのスピーナムランド制度はベーシックインカムではないといえるでしょう。このサイトで定義しているベーシックインカムの構想の「一人ひとり無条件で最低限の生活費をもらえる」というものとスピーナムランド法について比較してみます。

  スピーナムランド法 ベーシックインカム
支給される人 生活費が最低限に満たない人のみ 全員
支給額 最低限の生活費から収入を引いた額(一人ひとり支給額が異なる) 全員一律

こうしてみると、スピーナムランド法はベーシックインカムというよりかは、日本の生活保護に近い形といえるでしょう。働いても働かなくてももらえるお金は変わらないわけですから当然勤労意欲は低下します。また、企業側が労働者の賃金を下げだしたため、これも勤労意欲の低下に拍車をかけたといえるでしょう。

結果的にスピーナムランド法にかかる財政が膨れ上がり、その財源を確保するために増税をしますが、こうなると国民全員が貧民化してしまうことになります。

最終的にスピーナムランド法は廃止されることとなりました。

これだけを見た場合、スピーナムランド法が失敗した理由は「制度上の問題が原因で勤労意欲が低下したこと」「フランス革命による物価の上昇という緊急事態が発生したためにすぐに対策を打つ必要があり、長期的なことを考えられなかった」ということが考えられます。

その点、ベーシックインカムは働こうが働くまいがもらえるお金は変わりませんから働けはそれはベーシックインカムにプラスの収入となります。勤労意欲自体が低下することは考えにくいですし、現在の日本は社会問題をたくさん抱えてはいるものの、じっくり腰を据えて制度を作っていく余裕はあるといえるでしょう。

ただ、企業側が労働者の賃金を下げる可能性があるという部分に関しては少し考えなければいけないかもしれません。

「ヒト」は変わらないかもしれないが

引用元の記事には最後はこういった言葉で締めくくられていました。

同じヒトである以上、200年前のイギリス人も現代の日本人もたいして変わりません。ベーシックインカムも、きっと同じような「愚者の楽園」を生み出すことになるでしょう。

引用:ベーシックインカムは「愚者の楽園」 – 橘玲公式サイト

ヒトは時間がたっても変わらないのだから一度失敗したスピーナムランド法と同じく、ベーシックインカムも失敗するとしています。

確かに私たち「ヒト」としては200年前のイギリス人とあまり変わっていないのかもしれません。しかし、「ヒト」を取り巻く「環境」は200年前とは大きく異なっています。

この記事を書いた2016年から200年前の日本といえば1816年ですが、この頃の日本は江戸時代であり、まだペリーが日本に来ておらず鎖国が続いていた時代です。そのころに比べて今の日本は200年前の江戸時代の日本とあまり変わっていないという人はいないでしょう。

環境は変わっていくものですから、過去に失敗したからといって今度も失敗すると簡単に決めつけるのではなく、今の環境ならば問題解決の一つとしてベーシックインカムという流れも悪いことではないと思います。

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