ベーシックインカムは現在欧州において議論が交わされていますが、実は北米のカナダでベーシックインカムが試験的に導入されていた時期がありました。
試験導入されていたのはかなり昔の話
まず、ベーシックインカムはいきなりカナダ全体で導入というわけではありません。カナダのマニトバ州というところで試験的に導入を行い、ベーシックインカムがどのような効果をもたらすのかを調査することが目的でした。
そして、これが実際に導入されたのは1974年から1979年の5年間です(実際には5年続きませんでした。理由は以下に記します)。
この記事を書いた2016年から42年も前にこのような社会実験が行われていたのですね。
制度の内容
それでは、実際にマニトバ州ではどのようなベーシックインカムが導入されたのでしょうか?
MINCOMEの特徴は、障がいを持った人など一部の人(世帯)ではなく、マニトバ州ドーフィンに住むすべての人(世帯)を対象とした点があります。MINCOME以外の収入がある場合、1ドルにつき、50セントMNCOMEの支給額を減らすなど、MINCOME以外からの収入を考慮して、支給額が算出されていました。
引用:1970年代のベーシックインカム社会実験、カナダ・マニトバ州の「ミンカム」の成功と失敗 – DRIVE
※MINCOMEとは、minimum incomeという単語をつなげた造語であり、この制度の名称です。
このサイトではベーシックインカムの定義を「一人一人に無条件でお金をもらえる」としています。カナダで実際に行われたベーシックインカムの実験は上記のとおり「ベーシックインカム以外の収入があると支給額が減少する」という決まりがあったため、「無条件で」ってところが少し違うところになりますね。
マニトバ州の社会実験は5年続かなかったが・・・
残念ながら、このベーシックインカムは予定していた5年を待たずして終了してしまいました。しかし、こればベーシックインカム制度が破たんしたのではなく、1970年代に発生していたオイルショックなどの不況によってカナダ全体での不満がたまり、政権交代という事態が発生したためであり、ベーシックインカム制度自体が問題で中止されたわけではありません。(もっとも、ベーシックインカムに使われる予算がインフレを考慮していなくて足りなくなったということはありましたが・・・)
結果的にベーシックインカム制度は4年間続き、そしてそこから得られた影響が以下の通りです。
農業に依存した地域で多くの世帯が農家(自営業)でした。農業は、農作物の価格変動や気候の変化などリスクを抱えています。そんな人々が多く住む地域に毎月決まって無条件に支給される所得は、彼らに経済的な安定と備えを提供しました。ハフィントンポスト(カナダ)誌は当時のMINCOMEを振り返り、「貧困を撲滅した」と評価しています。
引用:1970年代のベーシックインカム社会実験、カナダ・マニトバ州の「ミンカム」の成功と失敗 – DRIVE
自営業は毎年の収入が不安定なことが特徴です。自営業の人にとってはこのベーシックインカムは大変大きな安心を得ることができたといえるでしょう。
一方で、先ほど記した「予算が足りなくなった」という部分に関しても考える必要があるでしょう。最低限の生活を送ることができる費用というものは景気や物価によって変動しますから、ベーシックインカムを導入する際は国が毎年最低額をよく把握しておき、最終的にかかる予算を確保しておく必要があるといえそうですね。
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